「直線が曲がって見える」「線が歪んで見える」そんな違和感を覚えたことはありませんか?それらの症状を目の疲れや老眼と考えてしまいがちですが、実は「黄斑上膜(黄斑前膜)」という目の病気のサインかもしれません。 最初は気付きにくい病気ですが、放置すると日常生活に支障をきたすこともあるため、早期発見と適切な治療が大切です。
今回は黄斑上膜の原因や症状、治療法についてわかりやすく解説します。視界の異変に心当たりがある方は、ぜひ最後までお読みください。
黄斑上膜とは
黄斑上膜とは、網膜にあるセンサーの大事な部分に薄い膜が張ってしまい、線が歪んで見える、ものが大きく見える、視力が低下するなどの症状が現れる病気です。網膜上膜、網膜前膜、黄斑前膜とも呼ばれます。 50歳~70歳頃の方に見つかるものの多くは、特に原因がない『加齢』に伴うものです。他には網膜剥離や網膜剥離の術後、ぶどう膜炎などに伴って生じることがあります。
【黄斑上膜の症状】
・線が歪んで見える
・ものが大きく見える
・ぼやけて見える、不鮮明に見える
・視力が下がった
・かすんで見える
・画面が歪んでいる
黄斑上膜の自己チェック
まずは、簡単な自己チェックをしてみましょう。
下記のアムスラーチャートの中央の黒い点を、片目で見てみてください。(使わない方の目は手で隠したりしましょう。)
黒い点を真ん中に見ながら、黒い点の周りの線を意識してみてください。
線がくねくねしていたり、歪んだりしてませんか?
また、片目ずつ見たときに、大きさは変わりますか?
上記のように、見え方に歪みがあることを『歪視(わいし)(変視(へんし))』、ものが大きく見えてしまうことを『大視症(だいししょう)』と言います。
黄斑上膜があると歪視、大視症、視力低下などの症状が現れるため、少しでも症状があると感じた方は、早めに眼科を受診するようにしましょう。
黄斑上膜の検査方法
黄斑上膜の症状で受診した時は、下記の検査を行うことが一般的です。
①視力検査
②OCT検査(網膜(黄斑部)の断面画像を撮影します。)
③散瞳検査(瞳孔を広げて眼底の状態を確認します。)
④アムスラーチャート検査(ゆがみの程度を確認します。)
OCT検査を行った時、網膜の状態が正常だと上の写真、黄斑上膜の場合は下の写真のような状態となります。
【正常の場合】
【黄斑上膜の場合】
正常な網膜の中央にある綺麗な窪みが、視力「1.2」が出る中心窩(ちゅうしんか)です。中心窩にはものを見る際に必要な細胞が全て集まっており、視力を出すために一番重要な領域となります。
しかし、その中心窩の上に薄い膜が生じ、網膜を上側に吊り上げているのが「黄斑上膜」です。下記写真の赤い四角で囲った部分が歪視を生じさせ、下側の青い丸で囲った部分が傷害されると視力低下します。
黄斑上膜の治療
黄斑上膜は点眼薬や内服薬では治すことが出来ない、かつ、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正もできません。症状が軽度であり日常生活に支障がなければ経過観察に留めますが、治療が必要な場合は硝子体手術となります。 目に3〜4箇所ポートを立て、眼底に生じた膜だけを取る手術になります。
現在は、医師の努力と手術機材の発展により、日帰り硝子体手術が可能になっています。ひかる眼科の本院であるこんの眼科で手術を行うことが出来ます。
下記は手術動画になりますので、興味のある方はご覧ください。網膜に生じた膜を剥ぐ部分だけ動画で編集いたしました。(術者:皆川医師)
黄斑前膜は網膜裂孔が原因になることもあるので、手術では眼内を全周確認し、必要時はレーザー治療や医療用ガス置換を行います。医療用ガス置換を行った場合は、術後二週間のうつ伏せが必要になることがあります。
まとめ
黄斑上膜は、視界に歪みやぼやけを引き起こす目の病気です。
しかし、視界の歪みは黄斑上膜以外の病気でも見られることがあります。そのため、「線が曲がったり歪んだりして見える」「ものが大きく見える」などの症状がある場合は、ぜひ当院への受診をご検討ください。
文責 皆川 友憲